コラム:耳コピのコツ(第1回) ちょっと脱線。理論の話は重いので息抜きをしましょう (実際、書いててあまり面白くない)。耳コピする人のた めになるかもしれない話でもしてみます。とりあえず音楽 理論の耳コピへの応用について、何回シリーズになるか謎 ですが、小分けにして書いていきましょう(結構膨大な量 になるんで)。 僕もさんざんやってきましたが、耳コピははっきり言っ てツラいです。まったく理論の素養がないにかかわらず、 4~5分程度の曲を完コピできるとすれば、相当の気力/ 気合の入った耳の持ち主であると思います。しかしそんな 人でも、HDの中身を覗けば、途中で飽きられ捨てられた 未完のデータが山のようにあって、すごいことになってる でしょう。 人によって違うでしょうが、耳コピを阻む要因は、 1.コード構成が聞き取れない 2.速すぎてわからん 3.ノイズみたいなギターをどうやってMMLに落としたら… 4.リズムが取れない。ていうかドラマーめ 5.音が似ない 6.コードは取れてるはずだが、なんか違う音も鳴ってる 気がする 7.すぐ飽きる 8.AMラジオの音源からMML起こしている 経験上、こんな具合にまとめられると思います。6は1 の派生系の悩みともいえるでしょう。で、こればっかりは どうしようもないという7を除いた上で、耳コピ最大のラ イバルとなるのが1であると思われますが、ちょっとした コード理論(この講座の前回と今回程度の内容)を知って いるだけで、作業効率が目に見えて良くなる場合が多くあ ります。僕が実践している耳コピの方法を紹介しましょう。 まず曲がメジャーかマイナーかを知ります。これは問題 ないでしょう。明るければメジャーで暗ければマイナーで す。 次に曲のキーを探ります。キーは曲中のコードやメロデ ィに使われる音程のだいたいの目安を教えてくれます。だ いたいの、というのは、ほとんどの曲は部分的に転調して いたり、途中から完全に転調していたりするため、最初に 確定したキーのダイアトニックコードだけではフォローで きない場合が多いからです。 キーを知るには曲の最初か最後の小節のベース音に注目 します。なぜなら、このどっちかにトニックが来る場合が ほとんどだからです。実際、曲のアタマがトニックである ことがきわめて多いので、最初からこれをトニックと決め 打ちしても8割方は当たりです。なんで最初がトニックか というと、よほどヒネくれた曲でない限り、その曲のトー ナリティを早めに方向づけて、聞き手に提示しようとする からです。これは「聴きやすさ」にもつながってくること で、そのためにもっとも安定したトニックを早めに打ち出 してくるというわけです。ちなみにトニック以外だとサブ ドミナントから始まることが多いです。 どっちにしろ、曲中でもっともしっくり来る音(=安定 した音)がトニックですから、こういう音を探りながら聴 きましょう。ああ、言い忘れましたが、ベースとコードの 関係。ベースはたいていコードのルートを弾きます。ベー スには、サウンドを安定させるためにコードの土台を提示 する義務があるんです。したがって、フュージョンとかで、 細かいノートでアホみたいに動くようなケースでも、よく 聴くと小節のアタマはほとんどルートを弾いています。 さて、仮に、メジャーキーの曲で、1発目のベースがE だったとしましょう。曲を聴きながら、頭の中でも、手近 な楽器でもいいですからEの音を伸ばしっぱなしにしてみ てください。それで違和感なく、しかも「終わった感じ」 がすればその曲のトニックは間違いなくEメジャー(曲の 始まりなのに終わった感じとは変ですから、「安定した感 じ」と言い換えましょうか)。で、トニック=キーですか ら、曲のキーはEメジャーです。これが第1段階。耳コピ する時に、キーを探さず、いきなりコードを聞き分けよう としても結構ではありますが、キーを探すことにより曲中 で使われているコードが絞られるため、時間と手間が大い に省かれることでしょう。 キーがわかると、そのキーのダイアトニックコードも自 動的にわかります。そこで、曲のベースを大まかに採った 上で、そのベース音をルートとするダイアトニックコード を機械的に当てはめていきます。1小節区切りぐらいで。 これが第2段階。たとえば、ベースがE→C♯→F♯→B などと1小節ずつ切り替わっていれば、Eメジャーキーの ダイアトニックコードE(M7)→C#m(7)→F#m(7)→B7である ことがほぼ確実です。この4小節のように、ルートが機能 的に動く(ドミナントモーション)場合は非常にわかりや すく、こうやってどんどんアタリをつけていくことができ ます。すごいじゃないですか。キーとベースがわかっただ けで、他を聴かなくてもコードが特定できちゃうんですよ? では、聴いて確かめてみて、問題なければ次へ進みましょ う。 ダイアトニックスケールにないベースが出てきたら…こ れは次回へ続く。とにかく、耳コピの鉄則はまず「キーを 知る」ことです。覚えておいてください。 (つづく) (EOF)